フランス人ぽいところ探し(メグレ警視シリーズ)
子供達について図書館に行き,たまたまフランス文学の棚の前を通ったら,有名なフランス発のシリーズで,一冊も読んだことないものがいくつかあることを思い出してしまった.今後の人生をフランスへの郷愁を心の糧に生きていきそうな私ですから,これは手に取らないわけにもいかない.
そのひとつがこれ,メグレ警視シリーズ(1巻目が棚になかったので2巻目で).イギリスものの推理小説は結構読むけど,これは一度も手にとる機会なかったのだ.
というわけで,とりわけフランス人ぽい部分を探そうという目で読んだことは言うまでもなく……そして実際たくさんあって個人的に楽しかった(本はもう返しちゃったので,以下「」で囲んであっても正確な引用ではありません.雰囲気だけ).
なにしろ,殺人があった部屋の留守番をしろと部下を残してって,しばらく後にその建物に戻ってみたら,
「生真面目な○○はちゃんと部屋にいた」
て……日本の小説だったら,留守番をするよう残してった部下がその部屋に留まってなかったらひと騒ぎだよね?あいつ自由過ぎるってことになるよね?
さらに,その次の留守番に送り込まれる部下は「居眠りしててもいいんでしょう?」と上司に聞くし,上司も「問題ない」て……実際居眠りしててもいいような留守番てのはあるけど,そうあけすけには言わないよね普通.
しかしまあ一番数多く散りばめられていたフランス人ぽい箇所は,やはり食事に関するところでしたな.食事の位置づけがかなり格上な感じ.12時から2時までは建物内はいつも閑散としている,という記述があったり,刑事達が互いの食事時間に気を使う会話があったり.
特別おいしそうな料理の描写があるというわけでもなかった(この巻は)から「フランス料理♥(はぁと)」ていうのとは違うけど.
あと昼間っからアルコールは当然.証人に事情聴取する場にもビールを,しかも2人なのに最初から4杯注文.たとえ夕食の後に捜査の続きで出ていく予定があっても,平気で強そうな酒を飲む.それらについて「なぜその種類の酒を飲むのか」という説明の記述はたまにあるけど,「なぜ今飲むのか」についての言い訳めいた記述は一切ない.……当然だからだろうね?
最後にキーとなる人物と対面することになる時は,今から1時間半後くらいに行く,と余裕を持って時間設定するのはいいけど,その理由に「食事がまだなので」とふつうに告げてしまう.日本だったら「捜査の途中でのん気に食事かよ?」と根性論が出てきそうだ.実際には日本でも捜査中の刑事だって食事は当然取るだろうけど,時間が遅くなる理由として食事を挙げることはないのではないだろうか?想像だけど.
日本のビジネス界で,食事時間を理由に時間をずらしたい,と言いたい時は,相手の食事時間に気を遣う風な言い方をするのではないかねえ?
ヒトの根源的な欲求の部分に忠実な社会は,人に寛容かもね,って思った.あとあれこれ不測の事態にも寛容になれるかも.
←次はアルセーヌ・ルパン
by inui56
| 2012-04-30 08:48
| 本
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