乾睦子の玉虫色日記

カテゴリ:本( 18 )




ルパンは犯行予告をしない 「怪盗紳士ルパン」読了

怪盗紳士ルパン (アルセーヌ・ルパン全集 (1))

モーリス・ルブラン / 偕成社



ルパンIII世のおじいちゃんの方です.実は初めて読んだ.

長編かと思いきやこれは短篇集で,生い立ちに触れる物語もあれば,逮捕されることもあり,その後脱獄してみたり,とバラエティ豊か.大ヒット連作モノの最初はこういう風に人々の心を掴んだのかー,という具合にも読める.

キザで,結構女性にモテて,ポリシーのある盗みをする,というあたりは読まなくてもあれこれ聞いている通り(III世もTV長編や映画ではいつも女性にモテるから,あれがおじいちゃんゆずり).

あと,顔をかなり変える,という変装の技もいろいろ持っている(アニメみたいにビリっと脱げるようなものではなさそうだけど).私はルパンIII世大好きだけど,顔を完全に変えられちゃうのはちょっとだけストーリーをつまらなくすると思っていて,だけどあれはおじいちゃんゆずりの技だったのであった.

意外だったのは,ルパンは原則として犯行予告をしない,ということ.

中には犯行予告をする短編もあるんだけど,「あのルパンが犯行を予告なんてするはずがないじゃないか」というようなことを登場人物が言っていた.元祖ルパンが予告するのは,予告した相手のリアクションを利用したい場合に限るらしい.なーるほどー,もちろん論理的ではある.

キザな盗人がたいてい犯行予告をするようなイメージがあるのは,この元祖ルパンのストーリーのひとつが伝わったせいなのだろうか.他に源があるのかな?

III世の名作「カリオストロの城」のストーリーでは犯行予告を利用してるよね.あれは正当派なわけです.

あと,ルパンには結構仲間がいる

別行動である程度重要な働きをしてくれる次元・五右衛門クラスの共犯者が登場する話もあるし,力仕事してくれる若い衆を大勢連れてきてわーっと一気呵成に全部運び出す,とかいうのもあるのね.後者はかなり大組織なイメージだったなー,読んでる限り.

若い衆いっぱい食わせていくためには,かなり頻繁に盗む必要があるだろうなあ…必要な時だけリクルートするのかなあ…

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by inui56 | 2012-05-23 05:49 |

フランス人ぽいところ探し(メグレ警視シリーズ)

メグレ間違う (河出文庫)

ジョルジュ シムノン / 河出書房新社



子供達について図書館に行き,たまたまフランス文学の棚の前を通ったら,有名なフランス発のシリーズで,一冊も読んだことないものがいくつかあることを思い出してしまった.今後の人生をフランスへの郷愁を心の糧に生きていきそうな私ですから,これは手に取らないわけにもいかない.

そのひとつがこれ,メグレ警視シリーズ(1巻目が棚になかったので2巻目で).イギリスものの推理小説は結構読むけど,これは一度も手にとる機会なかったのだ.

というわけで,とりわけフランス人ぽい部分を探そうという目で読んだことは言うまでもなく……そして実際たくさんあって個人的に楽しかった(本はもう返しちゃったので,以下「」で囲んであっても正確な引用ではありません.雰囲気だけ).

なにしろ,殺人があった部屋の留守番をしろと部下を残してって,しばらく後にその建物に戻ってみたら,

「生真面目な○○はちゃんと部屋にいた」

て……日本の小説だったら,留守番をするよう残してった部下がその部屋に留まってなかったらひと騒ぎだよね?あいつ自由過ぎるってことになるよね?

さらに,その次の留守番に送り込まれる部下は「居眠りしててもいいんでしょう?」と上司に聞くし,上司も「問題ない」て……実際居眠りしててもいいような留守番てのはあるけど,そうあけすけには言わないよね普通.

しかしまあ一番数多く散りばめられていたフランス人ぽい箇所は,やはり食事に関するところでしたな.食事の位置づけがかなり格上な感じ.12時から2時までは建物内はいつも閑散としている,という記述があったり,刑事達が互いの食事時間に気を使う会話があったり.

特別おいしそうな料理の描写があるというわけでもなかった(この巻は)から「フランス料理♥(はぁと)」ていうのとは違うけど.

あと昼間っからアルコールは当然.証人に事情聴取する場にもビールを,しかも2人なのに最初から4杯注文.たとえ夕食の後に捜査の続きで出ていく予定があっても,平気で強そうな酒を飲む.それらについて「なぜその種類の酒を飲むのか」という説明の記述はたまにあるけど,「なぜ今飲むのか」についての言い訳めいた記述は一切ない.……当然だからだろうね?

最後にキーとなる人物と対面することになる時は,今から1時間半後くらいに行く,と余裕を持って時間設定するのはいいけど,その理由に「食事がまだなので」とふつうに告げてしまう.日本だったら「捜査の途中でのん気に食事かよ?」と根性論が出てきそうだ.実際には日本でも捜査中の刑事だって食事は当然取るだろうけど,時間が遅くなる理由として食事を挙げることはないのではないだろうか?想像だけど.

日本のビジネス界で,食事時間を理由に時間をずらしたい,と言いたい時は,相手の食事時間に気を遣う風な言い方をするのではないかねえ?

ヒトの根源的な欲求の部分に忠実な社会は,人に寛容かもね,って思った.あとあれこれ不測の事態にも寛容になれるかも.

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by inui56 | 2012-04-30 08:48 |

「借りぐらしのアリエッティ」を見た

借りぐらしのアリエッティ [DVD]

スタジオジブリ

昨年の暮れに,この映画をTVでやっていた(のを録画した)のを見た.

事前の学生情報では…「小人の話っす.それだけっす!」てことだった.で,見てみてどうだったかと言えばまあ…そんな感じでしたかかしらねえ…好意的な評価でも「小人から見た世界が美しい」としか聞かなかったからねえ…まあそれを見る映画なんだろう.と思いました.

小人から見た世界っていう意味では,水の表面張力の大きさがそこここで強調されていたよねえ.ティーポットから水がすーっと出てこないで,ポタッポタッとコブシ大(小人の)の水滴で出てくるっていう.レイノルズ数とかいう単語を思い出しながら見ていた.

だったらあなたたちの体内のその細そうな血管には一体どういう血液が流れているの?とか野暮なことも考えつつ.

でもジブリ映画の映像の細部に凝るところ,美しさや表面張力もだけど,よくよく見るとおふざけを発見できたりするあの感じが私は好き.物語中に出てくるドールハウスの細部なんて,よくよく見たらきっと楽しいことが眠っていそう.そういう意味ではもう一回見てもいいかな.

ちょっと残念だったのは,小人達から見た世界,という以上のものがなかったことだねえ.例えば,小人達の同族がすごく減ってしまった,というようなセリフがあったけど,じゃあ昔はどのくらいいたのか.人間が今みたいな都市生活を営み始める前はどんなだったか.

小人達の存在が何か人間の歴史上の出来事に影響してた,みたいなエピソードがあるとさらに良かったかな.徳川家康の情報戦勝利の陰には小人たちの貢献があった,みたいなの.

原作を読んでみたい.映画のストーリーに入ってないそんなエピソードがあるのかどうか.

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by inui56 | 2012-01-10 06:40 |

「博物館へ行こう」読了

博物館へ行こう (岩波ジュニア新書)

木下 史青 / 岩波書店



博物館・美術館に行きたくなる!・・・読んだ感想はその一言に尽きる、っていうくらい素敵なメッセージいっぱいの本でした(いやもう・・・本当のところずーっと前に読んでたはずの本で、今頃読み終わったことがバレるのは大変恥ずかしく、感想を上げるのやめとこうかと思ったくらいな事態なんだけど、やっぱりとても素敵な本だったので書きます。)

この本の基盤は一貫して、一般論でなく、博物館の展示デザインに携わる著者が手がけた事例や経験で構成されているから、その個々のエピソードを読む面白さももちろん大きい。ジュニア新書だから当然読みやすいし。

だけど基本はタイトルどおり、どんな博物館でもいいからちょっと行ってみたくなる本。

とくに、科学や自然史の博物館は行くけど、歴史的な遺物を集めたような展示は旅先で行くもの、ましてや美術館なんて海外旅行先の超有名なヤツくらいしか行かぬ、という人(いやつまり私・・・)にお勧め。まずそもそも自然史、歴史、美術を展示する建物はすべて「博物館」なんだったなーというところからして再認識させられる。

ものすごく宣伝されてる特別展に行列して入る、んじゃなく、普段ふらっと空いてる博物館に行く、というのをやってみたいなとか。

興味があるから行く、んじゃなくて、興味がないから見てみる、というのもありなんだなとか。

これ、旅先ではやってるわけだよね。知らないからって博物館に入ったり、ただただ記念に美術館に入ったりする。

それどころか、学生達にも普段そんなことを言い聞かせているよ、よく考えると。興味があることだけしか学びたくないなら大学に来なくていい。大卒の価値は、興味ないことでも勉強できること!、て私よく叫んでるわそういえば・・・(それほどに、今って「あの授業の内容には興味が持てない」という理由で単位を落とす学生が多い・・・そんな学生ほっといて落第させればいいのにねえ?ほっといたら怒られるんです今時の大学のセンセイは。それで上のような説教をすることに)。

印象に残ったのが、
”難しくて複雑な社会からは、とても理解に苦しむようなモノが出現することがある。”
というところ。その理解に苦しむモノの例がピカソ。へええ・・・これ、美術を学んだ方の常識的な見方なのかな。

キュービズムとかああいうのは、個人あるいは一部の先鋭的な人々の内部から生まれてきたもので、社会が後から追いついたんだと思い込んでいたけど、逆に社会が生んだものと考えるのかー。それだったら、旅先で記念に著名な美術館に入って理解できないけど見た、というだけでも内的に深い体験をしてることになるね。なるほど。それでいいんだ。

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by inui56 | 2012-01-03 11:55 |

「理系なお姉さんは苦手ですか?」読了

理系なお姉さんは苦手ですか? -理系な女性10人の理系人生カタログ-

内田 麻理香 / 技術評論社



この本の元webサイトの存在も知っていたし,twitterなどでタイトルが決まるプロセスなど見かけていて,買いそびれていただけのこの本が,なんと保育園ママつながりで私のところに.この本でインタビューされてる理系女性のおひとりが,すぐ近くにお住まいらしい.世の中理系女性だらけ,犬も歩けば理系女性に当たるということでしょうか(笑).

で,初めてまとめて読みました!

この本のメッセージは,著者がお書きになっているように,女性が理系を選択してもこんなにいろんな人生がある,ということ.理系を選択したら人生の幅が狭まる(いわゆる「つぶしがきかない」ってやつですかね)という考えがまだ世の中にはあるようだけど,実際にはその反対だよと.

というわけで,学業では理系を選択したけど,その理系学部から人が思い描く将来像とはちょっとはずれた女性たちが次々登場して大変興味深く読める.

まあ私としては11人中8人が生物系(医薬農含め)だってことにも驚いたよね(地学はマイナーだとしても数学はいてもいいのでは?と思った).だから実際には,理系の中のさらに一部の生物系学部を卒業した人の,バラエティあふれる人生,て感じであった.

これね,とても読みやすいのはなぜかと言うと,たぶん私も,そういう変わった経歴の人と出会ったら同じような会話をすると思うから.何かの会合で出会った面白い職業の女性が,意外と似たような出身(つまり理工系の学部)の人だと知って,その後の飲み会でもし席が近かったら,たぶんこうやって質問攻めにする(笑).そんな会話の本です.

ただ,ちょっと別の声もあったので紹介しておくと,理系で大学にいたことない場合,分からないことが多かったそうだ(私にこの本を仲介してくださった保育園ママさんの率直なご意見).

そういう目で読んでみると確かに・・・研究室に所属するとか,進学するとかっていうシステムはお互い知ったどうしで話が進んでるし,「一般の人にはこうこうこういう知識が伝わってないですからね」と話しておいてその知識の中身はやっぱり説明されてないとか,まあ・・・確かにそうかなぁという気もしたり.

あと,おしなべて高学歴でスーパーな女性が登場していて,これまたなんか一般人とは違う感を醸し出してしまうかもしれないとも思ったり・・・.

「親しみ」を持ってもらうためというより,中高生くらいに読んでもらって「憧れ」を持ってもらうために良い本かも.そのあたりの年代なら,システムが分からなくても分からないなりに「そういうもんか」と思って読めるだろうから.

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by inui56 | 2011-11-19 07:06 |

クロニクル千古の闇 シリーズ 読了

決戦のとき (クロニクル千古の闇 6)

ミシェル ペイヴァー / 評論社

もうなんかいろいろ回ってなくてドタバタしてるんですが,読み終わったことだけ書いておく!何年越しか分からんくらいかけたけど,読んでいる間楽しく,読み終わって嬉しかった.

主人公(というか著者)が,動物たちのわずかな痕跡を探したり,森の中で手に入るものを利用して生き抜く術を知っているので,その過程を読んでるだけでも楽しい.全体のストーリーはまた別.

1巻だけ読んだ時は,割と簡単に解決しちゃった?なんて思って,その森での生き方と登場するオオカミが魅力だなと実は過小評価していた.でも最終的には6巻全部で素晴らしかった.

ファンタジーに馴染めて,動物が好きで,自然の中で生きる生き方に憧れを持っている人にはお勧め.さらに悲しい終わり方が嫌いな人にも大丈夫.

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by inui56 | 2011-06-15 06:50 |

「南仏プロヴァンスの12ヶ月」とジェラルド・ダレル

ずっと以前に流行っていたのは知ってたけど,その頃フランスに興味なかったので読まなかったこれを読んでみた.

南仏プロヴァンスの12か月 (河出文庫)

ピーター メイル / 河出書房新社



ごめんなさい,バカにしてました.面白かった!

流行した頃のこの本の紹介は,自然とともに生きる南仏の暮らし地元の人々との暖かい交流時計が要らない暮らし,みたいな感じではなかった?(興味無かったからよく覚えてないだけかもだけど)

そういう面は確かにあるけど,のっけからフランスでのお役所仕事の超お役所ぶりが紹介され,リフォーム工事の職人さんが全然予定通りに来てくれないとか,しかしいざ来てくれると善人ぞろいで憎めないとか,これまさにフランス.

主眼はあれですよ,移住してきたイギリス人の目線で地元の奇人変人(地元ではふつうの人が多いのだろうが)をご紹介,てとこなんでは.こういうの大好き.

ま,奇人変人を評価して切り捨てるだけなら逆につまらないことになるわけで,プロヴァンスという土地や文化,人々に対する愛が基礎にあるのはそれは当然のことであります,念のため.

移住してきたイギリス人が地元の奇人変人と交流,という作品でもうひとつ大好きなのを思い出した.これ.

虫とけものと家族たち (集英社文庫)

ダレル / 集英社

これはギリシャの島に移住したイギリス人家族の生活,自然,地元の人々との交流を語る(こっちの方が奇人変人度ははるかに高い,家族のメンバーからしてちょとトンでる).語るのは動物やら虫やらが大好きな少年.大好き.

南欧のラテン系の人々が面白い,というより,それを切り取るイギリス人の目線が面白い,ってことなんじゃないかと思うな.

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by inui56 | 2011-05-30 07:05 |

歴史に学ぶって難しい(「ローマ人の物語 キリストの勝利」読了)

ローマ人の物語〈40〉キリストの勝利〈下〉 (新潮文庫)

塩野 七生 / 新潮社


下巻だけリンクしたけど,文庫で上中下3巻になったのを最近読んだ.文庫が出る度に読み進んでるのです.

この巻はローマ帝国全体がキリスト教国になっていく過程を記述していて,何と言うか,他の神を神と認めないキリスト教が世界を変えてしまったことが大変残念に思われてくる巻.

多神教(いろんな神を認める,他の宗教の神さえも取りこむ余地がある)と,一神教(神はひとつ,他の宗教の神ってのはあり得ない)とは,あの宗教とこの宗教,という以上の違いがあったということが繰り返し記述される.

私は中高をプロテスタント校で学んだので愛着はある側です.愛着はあるけど,洗礼受けようという気には決してならなかったのは,ここに書かれているような感情もあるかなぁ.日本人にはとても納得行く記述.納得行く以上に,多神教の国に生まれ,多神教を理解できる日本人で良かったーと思える(日本人は信仰心うすく無節操と言われるが,それって要するにいろんな神がいることを許容してるわけで,どっちかと言えば多神教の精神だよね).

キリスト教が主に社会の下層の方から広まって行き,「異教」(ローマの古来の宗教,ちなみに多神教)の最後の砦はローマの最有力者の集う元老院であったというのも,当時の社会の雰囲気を伝えてくれる.ふつうに考えてみりゃ新しい宗教ってそういうもんだろうと気付きそうなもんだけども,なんとなくそこまで想像したことなかった,という点が描かれていて興味深い.

シンマクスとアンブロシウスの書簡のやり取りが全文紹介されてて,確かにそのやり取りは示唆に富む.「歴史に学ぶ」と言うのはかくも難しいことなのだと気付かされる.

その書簡のやり取りというのは,古い宗教と新しい宗教とのメリットを論じた書面での戦いなんだけど,新しい側っていうのは常に「古いものをいかにも陳腐に,バカらしく見せる」という戦法が使えるんだなぁと実感させてくれる.

つまり,古い側は最初から「古臭い」という不利がある.その上,そのやり方で失敗した事例も同時に見えてしまう.逆に新しい側は常に「歴史上の失敗に学ぶとこうすべき」と言い張ることができる.デメリットがまだ明らかになってないから,新しいってだけで素晴らしそうに見せることができる.

宗教だけでなく,例えば新しい社会体制を作っていく上で,そういうロジックに陥って新しいことを熟慮ないまま取り入れるってことは現代でも多くあるわけで.

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by inui56 | 2011-05-03 06:02 |

「指揮者の仕事術」読了

指揮者の仕事術 (光文社新書)

伊東 乾 / 光文社



この本は,伊東さんと私の共著です.

嘘です.伊東乾(けん)さんという単独の著者による本です.実は教養学部時代の同級生だったりする.でも音楽家だとは当時はついぞ知らなかった.

音程の仕組み,リズムを作るテクニック,第九の歌詞からキリスト教の世界に深く踏み込むかと思えば,ホールの音響の仕組みを解説,聴衆に歌詞の内容を伝えるための先人の知恵・・・.音楽のいろいろなテクニックを科学的に解き明かしていて,とーても面白かった.

私はたいして音楽好きとは言えないけど,オーケストラの演奏会やバレエを見に行ったことは多少はあるとか,中高でキリスト教や聖歌に親しんでるとか,その中高の合唱大会で音楽が作り上げられていく過程は(稚拙ではあろうが)知ってるとか,ね,そういう経験があちこちにあるので,とても楽しめた.この本は,その程度のちょっとだけ下地がある人ならとくにお勧めかな.

たとえば純正調と平均律の話.ずっと前に「絶対音感」(最相葉月)を読んだ時に,絶対音感を身に付けた音楽家が「音程の取り方を勉強しろ」か何か師に言われてむしろ苦労する,という話が紹介されてたんだけどそれって何ぞ???とそのまま疑問だったことを解説してもらえた.純正調の楽曲って・・・聞いたことあるんだろうか私は・・・今度意識して聞いてみたい.

音楽ってのはテクニックじゃないだろ,という人がいそうだけど,彼のメッセージははっきりしている.

音楽を作り上げているのは,ひとつひとつの具体的な技術の積み重ね.漠然とした目標に向かって進めと言われても誰にもできない.だから指揮者というのは,目指す音楽を作り上げるために,具体的な指示を出せなければならない,と.

なるほどこういう本だったのかー!と思いながら読んだ.逆に言うと,この本の導入(指揮者って何?)とかこの帯↓とかは,ちょっと違う内容を想像させるんじゃないかなぁ・・・
弦が切れる、打楽器が床に落ちる、管の内部に水蒸気が詰まる、オペラ歌手が歌を間違える…そんな時こそ指揮者の出番です!

そういういろんな非常事態に現役指揮者としてどう対応したのか,上品に見えるクラシック音楽会の裏では実はこんなドタバタコメディが!みたいなエッセイ集を想像しておりましたよ私は・・・そんなの私だけでしょうか・・・

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by inui56 | 2011-04-09 08:24 |

「楢ノ木大学士の野宿」など読了

新編銀河鉄道の夜 (新潮文庫)

宮沢 賢治 / 新潮社



宮沢賢治作品から「楢ノ木大学士の野宿」,「虹の絵具皿」(十力の金剛石),「銀河鉄道の夜」を読みました.上の本を読んだわけじゃなくて,青空文庫というインターネット上の図書館で.なんと自由に読めるのだ,著作権が切れてるから.この青空文庫,他にもたくさんの作品がすでにアップされていて,入力等はボランティアの方なんだって.素晴らしい活動ですねー.感謝です.

さらにこの青空文庫の作品をKindle仕様にしてくれる青空キンドルというサイトを利用してKindle3に放り込み,冬休みに旅行先で読むことができた.ここにもまた感謝.

そしてKindle3は重さが薄手の文庫本と同じくらい.ディスプレイが光ってないから,つまり腕も目も疲れない.やっとこのKindle3をうまく使えた感じがあるわー.

「楢ノ木大学士の野宿」は火山と岩石中の鉱物が大騒ぎしてくれるので,火山・岩石好きにお勧め.

「虹の絵具皿」(十力の金剛石)は美しい鉱物オールスターな感じなので鉱物・宝石好きにお勧め.

そして「銀河鉄道の夜」は・・・再読だったけどやはりいいですねー.そしてこの物語にもこんなに鉱物名がたくさん出てきたとは記憶になかった(以前読んだのは多分この業界に入るずっとずっと前).

設定に関して余分な説明のない物語は,その分,余韻を残す.でも物語の内容だけじゃないんだよね.世界観とか何とかよりも,言葉やセリフのリズムが何となくいいっていう要素が大きいんじゃないかなー,宮沢賢治のものは.

耳から聞きたい感じ.どれも.

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by inui56 | 2011-01-09 21:06 |

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